月下星群 〜孤高の昴

    “たまには狡猾に。”
  


蒸気や燃料系の動力機関が少ないようなので、
ただ単に、文明が追いついてないだけの、少し過去の世界かと思いきや。
エネルがいたらしい土地やウェザリアとか、
空島には結構進んでいる科学があったりし。
そこへ加えて、
世界的な地盤の配置や
各所の環境条件にしてもあまりにも奇異なところが多すぎるので。
もしかして…人類文明が一旦滅びかかった後の世界だとか、
いっそ全く別の“アナザーワールド”かも知れないことまで匂わせる、
そんな我らがワンピースの世界は。
米を箸で食う文化が当たり前のように広まってるかと思や、
どっちかといや英語表記が多かったりもし。

  …………う〜ん、やっぱ謎だらけだわ。(おいおい)



原作のお話では、
ほんのちょこっと目を離した隙にという
“やあ うっかり”なんてなノリで、
それで済むかっ#と ナミさんやウソップがキレるほどのレベル、
そりゃあ壮大な事件に巻き込まれる彼らだからか。(とんでもねぇ…)
ほんの1日や数日を、
何カ月もかかって描写してくださっているため。
連載時期というリアルタイムは勿論のこと、
お話の中ででも“暦”の上でいつ頃なのかを
明確にされているエピソードは少なくて。
それを思うと、
海域ごとに、しかもランダムに、
夏だ冬だが切り替わる“四季島”設定は、
上手いこと出来てるなぁと思ったほど。
真剣本気、血わき肉躍る冒険や、
卑怯千万な陰謀を、爽快に快刀乱麻する大活躍は、
まま原作様にお任せするとして…。

 こちら、
 のんびりと航海中の彼らを覗き見しているカメラでお送りするのは、
 とある年度末の光景だったりし。

極端に暑くて真夏には人の気配もなくなるんじゃないかという夏島や、
うっかり冬場に上陸しちゃったら
悲鳴を上げたくなるよな極寒の冬島じゃあない。
ほどほどの気候なのでと
通年での生活がようよう成り立っておいでの秋島海域の一角、
奥まった地域では安定した気候ゆえの農耕や牧畜も盛んだし、
通過する船が補給に立ち寄ることから商いが発達し、
そこそこの栄えようを示しておいでの大きな“本島”は、

 「さすがに、
  海軍のお膝下だって条件つきだからこその繁栄らしいけれど。」

グランドラインの後半の海、別名“新世界”という海域は、
そこまでの航路だって十分“魔海”と呼ばれていたものを
なのに“パラダイス”だったと思わせるような、
そりゃあ凄まじい地獄の海だという。
たとえば気候条件が段違いで、
年中 雷霆ひらめく危険な島もあるというし、
そうかと思えば、どんな重力地盤なそれか、
空島とは別口の理屈で宙に浮かぶ島々もあるらしく。
前人未到の奇跡 渦巻く、
そう言った奇想天外系統の条件が厚みを増すことに加えて、
四皇の庭のような海域でもあるがため、
そのどれかの縄張りだという主張も強く。
七武海と違って海軍公認のそれではないけれど、
それでもそれ以上の守り札でもあるがゆえ、
下手な騒ぎを起こせば、瞬殺で存在を抹消されかねない海だともいえ。
そんなせいか、
こんな荒海で“一般人”で通しておいでの皆様の、
海賊への警戒の仕方も微妙なものであるらしく。

 「正々堂々、真っ当なだけじゃあ
  やっていけないってことなんでしょうね。」

ロビンがくすすと微笑って話してくれたのが。
大きな声では言えないけれど、
海賊船でも旗印によっては着岸や上陸を認めなくはないですよとする、
非公認の“裏の浦”を設けている、中規模の島や港も結構あるという話で。

 「でもまあ、
  アタシたちみたいに どの傘下でもない海賊では
  どの道 どっかへ通報されるのが関の山なんでしょうけれど。」

肩をすくめたナミが言うように、
最近めきめきと頭角を現している新星世代のうちの、
特に悪名高いニューカマーの中へ、
まだ復帰して間もないにもかかわらず、
早くも数の内とされているかもしれない“麦ワラ海賊団”である以上。
海軍の息がかかっている土地はもとより、
海賊でもOKな土地でも、大手を振っての行動はご法度のはずで。
それでも補給は必要だからと、
沖の岩礁の陰にこそりとサニーを停泊させて、
今回はフランキーとブルックをお留守番に残しての
買い出し上陸と相成っており。

 「フランキーを連れて来なくてよかったの?」

特殊燃料のコーラとか、船の補修用の資材やら、
食材にしてもかなりの大量を仕入れにゃならんのだろうに。
あの力持ちがいなくては大変じゃないかとナミが声をかけたのは、
金髪にダークスーツのシェフ殿だったが、

 「大丈夫っスよ、ナミさんっ!」

ああ、大変じゃないかなんて案じて下さるとは嬉しいなぁと、
まずは本能の赴くままの“嬉しいvv”へ弾けてのこと、
その痩躯をぐにんぐにんと よじらせて見せてから、

 「港までなら何処も配達してくれますからね。」

上陸するのに使った、それもフランキー謹製のサブマシンは、
どれもなかなかの馬力なので、
大量の買い出しも余裕でサニーまで運べようし、

 「それでなくとも、今は港中が、
  クリスマスや年越しの宴への買い溜めを見越した
  大売り出し状態らしいから。」

日頃から普通に商いをしている店舗以外にも
広場や街路沿いのあちこちで、
帆布の屋根をつけただけの露店はあるわ
荷車からじかに果実や野菜を売っている商人はいるわ、
売り声も 大小入り混じって
あちこちから盛んに聞こえるほどという状態なので、

 「金離れさえ良ければ、そのくらいのサービスはしてくれますって。」
 「そっか、そうよねvv」

資金は…あちこちで売られたケンカを買って溜めたのが
珍しくもまだたんとあるので問題はないしと来て。

 「じゃあ、そっちの買い出しは任せるわ。
  ウソップも…詰まんない“出物”は買わないようにね。」

 「判ってる…つか、何だよ、その詰まんない出物ってのはよっ#」

俺様の目利きを馬鹿にすんじゃねぇわいと怒りつつ、
だがまあ、
今回はチョッパーからも
包帯や晒布といった消耗品を見繕っててほしいと言われているので、
余計な寄り道はしないつもりでおいでの模様。

 「じゃあ、私たちは
  ドレスアップのための洋服漁りと、お飾りの収集ね。」
 「ええ♪」

ロビンには古書のお店も回ってもらわないとと笑い合い、
女性陣営は食料品より衣類や装飾品の集まってそうな市場の方へと
此処で別れての行動となるようで。


  ……って、ということは?





英語とワンセットで…というのはあまりにも大雑把な把握ながら、
だがだが、そんな勢いでの広範な分布を見せているのがキリスト教であり。
世界各地のどんな小さな島の港であれ、
英語が通じる土地であれば、教会が当たり前のように存在するほどで。
その教えの中にある、最も有名なお祝いの日、
メシア生誕の日“クリスマス”が近いとあって。
年越しも大事だがそれよりもと、
小ぶりなモミの木やそこへ飾るオーナメント、
ジンジャークッキーなどを扱う屋台が随分と多い。
案外と信心深い船乗りたちも、クリスマスはしっかり祝うようであり。
そういった荒らくれたちも買ってゆくのを見越してだろう、
ラム酒や干し肉、薪などを扱うような店までもが、
軒先から売り物だろうリースを幾つも提げているのは

  なんか、日本の神社のしめ繩飾りの売り場のようだが。

  「何だそれ? 美味い食い物なのか?」

あああ、いやその、
ワンピの世界とは無縁かもなので聞き流して、将来の海賊王様。

 「? ルフィ、誰と話してるんだ?」
 「うん、もーりんと。」

既に、何かの串焼きを数本ずつ、両手に鷲掴んでいる陽気な船長さん。
いい匂いに惹かれては、おっ美味そうな匂いがするぞと、
あっちへふらふら こっちへふらふらするのはまだいいが、

 『いぃい? チョッパー。
  アタシたちは、これで結構 悪名高き海賊団なんだから、
  この町自体はそれほど警邏も厳しくないとはいえ、
  海軍の耳に入ればあっと言う間に囲い込まれる立場なの。』

あと、四皇の一部にも、
傘下にも入らず自分たちへ屈しないなんて目障りだと
思われているかもしれないしねと続けたナミから、

 『だから、
  単なる方角へだけじゃなく、
  常識への方向音痴でもあるルフィやゾロが、
  こうまで人目の多いところで、目立つ真似をひょいとしでかさないように、
  あなたには“お目つけ役”を任命します。』

 『ええ〜〜〜っ!
  そそそ、そんな、無理無理無理だよぉっっ!!』

あの二人が暴走とかしたら、オレ止める自信なんてないよぉと、
出掛ける前から涙目になっていたけれど、

 『何も、牽制しろとか引き留めろなんて、
  甘い対処を言ってるんじゃないの。』

ずいとお顔を寄せて来たナミ曰く、

 『巨大化してその手で捕まえたそのまんま、
  港まで戻ってミニメリーに括りつけて、
  サニーまで送り出してくれたらいいから。』
 『うう、それなら何とか。』
 『おいおい、容赦ないぞ。』

そんなやりとりがあっての後、
船へ残してっても こっそりとゴムゴムのロケットで飛び出したところを
船ごと見つかるよりはマシと。
善良純真なトナカイドクターに、
一味で最もパワフルな“方向音痴コンビ”のお目つけ役が降って来たのだが、

 「お、見ろ見ろチョッパー。
  でっかいカニだぞ、風呂みたいな釜で湯でてんぞ。」
 「え? え?」

 「おお、何か向こうで
  居合い斬りの名人が傷薬を売ってるらしいぞ。」
 「なんだって? 薬?」

早速のように、
それもそれぞれが別々なほうへの関心を持ったような言いようをしたのへ、
いやあのその、順番に見に行こうなと
何とか宥めすかしてコトなきを得たのを皮切りに。
あっちだこっちだと勝手に進みかかるのを、
片やをトナカイ仕様になって背中へ乗っけてみたり、
駆け出す襟首を待った待ったと咥えて制したり。
そりゃあもうもう、体を張って頑張り通しておいでだったのだけれども。

 「何だよ、チョッパー。今日は何かいつも以上にスパルタだな。」

いつもだったら一緒になって、
甘い綿飴やチョコ菓子を探すのとか協力してくれんのにさと、
ルフィが頬を膨らまし、

 「何だお前ら、いつもそういうの目指して歩いてるのか。」

そんではぐれるんだな、そっかぁと、
酒や塩辛あたりしか眸につかんだろう、自他共に認める辛党な剣豪が、
成程なぁとポンと手を打って見せたりし。
そんな言われようには、さすがにがくりと肩から力が抜けたらしく、

 「…なんか、俺だけ一生懸命なのが不公平な気がして来た。」

  が、頑張れチョッパーっ。(笑)

そんなこんなという、
一点集中でなかなか骨が折れる港町のお散歩だったが、
お昼時を過ぎれば、ある意味こっちのもの。
というのが、

 「何か腹減ったなぁ。」
 「さっきからさんざん物喰っといて、よく言うな、お前。」

判ってはいたが一応はと、ゾロが突っ込みを入れたのも頷ける。
眸に入ったところを片っ端からというノリで、
美味そう美味そうと、何かしらつまみ食いし続けのルフィだったからだが、

 「だってよぉ、
  歩きながら食えるものって言ったら、
  串焼きとかパンに挟んだあれこれとか、
  ちみっとずつって限られちまうしよ。」

そうと言いつつ、ほんの先ほど覗いたシシカバブの屋台では、
そこから少しずつそいでグラム売りしていた肉の塊を、
ぶっとい串ごと丸々1本を
お買い上げしてしまってたルフィさんではなかったかなぁと、
トナカイ仕様のお顔でも苦笑しているのが判ったほどに、
口許を歪めてしまったチョッパーだったけれど。

 「……あれ?」

そんな彼がおやや?と、
その柔らかそうなお耳をくりんくりんと震わせたのは。
雑踏の中、特徴的な声が聞こえたからで。

  離してくださいよぉ
  やめてよぉ
  お婆ちゃんをいじめるなっ!

お年寄りとそれから、子供が上げた小さな悲鳴だ。
何だ何だと見回せば、屋台が連なる通りからは少し逸れる格好の、
小さな路地に入った一角で、
何やら揉めてる声が立ったようで、

  うっせぇなっ、
  お前の息子が、お前らの父ちゃんが溜めた借金が
  たんとあるって言ってんだよっ

  いくら流行ってても こんな小さい店の上がりなんて知れてる。
  ウチの親分の傘下に入りゃあ安泰だから、
  此処の権利を寄越しなって言ってるだけだ。

いかにもガラの悪い連中が、小さな店の中でがなり声を上げてるようで。
よくある話だ、関わり合っては火の粉が自分へも飛んで来かねぬと、
周囲の人々も辛そうにしつつ目を逸らしておいで。

  ああ、そうだよね、そうなる理屈は判る。

たとい、この場で自分たちがチンピラ風情を蹴り倒して、
今日の窮地だけは救えたとしても。
先日は余計な邪魔が入ったらしいなって言って、
別の連中が日を改めてやって来るだけなんだってことも重々承知だ。

 “でもさ、あのさ…。”

突き飛ばされたのか、
何かが転げる音にかぶさって“きゃあ”という悲鳴が上がってる。
いやいや、今日のオレは ルフィとゾロの見張りが仕事なんだ。
よそ見してちゃあいかんいかんと、
長い首の上で、鼻筋も長いトナカイのお顔をふりふりと揺すぶれば、

 「…? チョッパー?」
 「どうしたよ。」

よほどに目の焦点が虚ろだったか、
お守りしていた二人が逆に案じて覗き込んでくれたりするものだから。

 “ううう、この二人に任せれば、
  あんな因縁つけなんて、あっと言う間に星に出来るのにな。”

気持ちは判るが喩えが穏やかじゃないぞ、ドクター。(う〜ん)
でもでも、それじゃあいかんのだというのが本当に歯痒い。
中途半端な助っ人じゃあ、
もしかしてもっと迷惑をかける結果となるかもしれない。
お前らが雇った用心棒かなんて謂れのないこと言われて、
もっと痛い目に遭うかもしれない。

 「な、何でもないんだ。
  そろそろ帰ろうよ、
  サンジがサニーのキッチンにランチを置いてってくれてるって。」

 「えっ、ホントか?」

どうしても手に負えなくなったら、切り札にそれを言えばいいと、
チョッパーには微妙に甘いサンジが、こっそり耳打ちしてくれたから。
今それを出せば、此処から離れられもすると、
ルフィたちには知られないままの方がいいんだと、
苦い吐息を飲み込んでおれば、

 「…じゃあ、その前に。」
 「ああ。」

ふっと小さく笑い合った、麦ワラ海賊団戦闘班の看板二人、
特に力んだ訳でもないのに、何がどうしたものか
彼らの立ち位置から一閃という勢いの疾風が静かに起こり。
それが当たって立ち消えた、屋台の並びのその奥で、
ふっと二人分ほど、その気配がすうっと音なしになった存在がある。

 “………え?”

チョッパーの鋭い聴覚へ
さっきから痛いほど伝わっていたがなり声が ふっと消えて、
ドサドサがららと椅子か何かが転がる音。

 「やっぱりな。大した奴らじゃねぇんじゃん。」
 「ああ。
  それでも、婆さんや子供にはおっかないクチなんだろよ。」

ふふんと笑った二人が、何を言っているものか。

 「………あ、まさか。覇気の力、か?」

そうだそういえば、
この二人は2年の修行の間、
それぞれに覇気という感覚を研ぎ澄まして来もしたという。
悪魔の実の能力さえ凌駕する、攻撃のための覇気と、
居合わせる者の気配や戦意を的確に察知する覇気と。
あとルフィは“覇王色”という、
人を従える存在の威容に備わる、特別な覇気も持ってたそうだが。

 “それを使って?
  オレが察知した気配、二人も気づいてたってこと?”

じわじわと判って来たチョッパーなのへ、
そのなで肩を左右からポンポンと軽く叩いた、
頼もしい限りの“人外魔境”二人。

 「心配すんな。
  後腐れのないように、
  連中の頭とやらへも面白い話をつけて来てやる。」

  ………え?

 「俺らは、海軍からだけじゃあない、
  四皇のいづれからも
  傘下に入らず従わない生意気な奴らだって
  ずっとずっと目をつけられてる札付きだって話だからよ。」

そんな事実がまた、楽しくてしょうがないと言いたげに。
ゾロがふふんと切れ長の目元を伏せて笑えば、

 「そこで、だ。
  お前らも俺らとサカグチを交わした仲だってことを、
  こっからの航海じゅう、
  ずっと広めてやってもいいんだがなって。
  そいで、組だか組織だかの名前を確かめに来たんだって
  言ってやればいいんだと。」

ルフィの方は方で、どーだ参ったかーと、
そりゃあ楽しそうにとんでもないことを言うもんだから。

 「……………ええええっっ!!!」

何ですかそれ、
お前らもルフィ海賊団の関係筋だと言い触らしてやるだなんて、
この“新世界”という、阿鼻叫喚な勢力図が広がる航路にて、
そんな格好で名前が広く知れ渡ることがどういう効用を招くか、だなんて。
そんな…後から背条が嘘寒くなって来るような、
じわじわ来る心理戦なんてもの、
良くもあなたがたの頭から出ましたね。
唖然としているチョッパーも同じことを思ってるらしいのを
ついつい代弁してしまったもーりんだったのへ、

 「うん。ナミから教わった。」

屈託なく笑ったのがルフィなら、

 「……ちなみに、サカグチじゃなくて盃だぞ、ルフィ。」

恥ずかしい奴と、訂正を入れたのがゾロであり。

 さあ、ややこしい因縁つけてた奴らを回収して、
 大元の親分とやらのところへ乗り込もうぜと。

少しは面白い大暴れが出来るかなとの意気揚々。
この細さで何であれほどの力が出るのかという腕を
ぶんぶん振り回すルフィと、
しょーもない屋敷だったら粉砕してやるから、
そうなったらチョッパーは離れてなと
口の端だけで笑って見せるゾロの二人を。

 「………あ。」

ついのこととて、呆然としてしまったまんま
見送る格好になってたトナカイドクターだったれど。
周囲の物音が、雑踏の喧噪が、
感覚の中をじわりじわりと塗り潰すほど戻って来るにつけ。
先に立って遠ざかる二人の背中が、

  何でだろうね、
  そりゃあ楽しそうで、
  そりゃあ誇らしげに見えちゃったものだから。

ただただ立ち尽くしていたのへ、
うんと踏ん切りをつけたチョッパー、

 「ま・待ってよっ。」

そんな仲間二人へと、
絞り出すよにしての大きな声をかけている。

 「何だ、止める気か?」
 「言っとくけど聞かねぇぞ?」

肩越しに振り返った二人へと、
ううんと首を揺すぶると、

 「オレも行く。
  っていうか、俺が最初に気がついたんだからな。」

二人は介添えだぞ、判ってるのか?と、
妙に気を張って、待って待ってと追いついて来たトナカイさんなのへ、
二人の喧嘩好きがお顔を見合わせ合い、
おお、見込みのある奴だと、
頭やら背中やら、グリグリ撫でてやって。


 さあ いざ行かんと、歩きだす3人であり。
 結果として、ひと騒動起こしそうな
 そんな雲行きになってるとも知らないで……









 「でも、何でまたあんなパワフルなお二人のお守りを
  チョッパーさんに任せたんでしょうね。」

勝手に町へ出てって
騒ぎを起こされては困る云々という理屈は判るが、
それにしたって、
あんな素直で気が小さいトナカイさんでは、
あの二人からでも言いくるめられる恐れだってあろうし、
最悪振り切られる可能性だって大きかろうにと。
お留守番を任されておいでのブルックが、今になって口に出せば。

 「そうそう見くびるもんじゃあないし、
  何より、チョッパー自身へナミが言ってたのは
  半分ほどは口から出まかせだかんな。」

 「はい?」

一体何を作っているものか、
設計図なんてないまま、
分厚い合板と鋼の板を組み合わせ、
テーブルのようなものを組み上げているフランキーが。
手のひらから出て来た小さな手の先で、
ドライバーにて小さな木ネジをくるくると絞めながら、
へへへんと笑って続けたのが、

 「何でもクリスマスはあのトナカイの誕生日らしいんでな。
  その準備や贈り物の買い物を見せる訳には行かないんで、
  ルフィとゾロにも、
  せいぜい引っ張り回してやれって指令が降りてるらしいぜ?」

 「おおお、それはまたvv」

だったら何がどう転んでも大丈夫でしょうねぇと、
ごくごく当たり前の納得を持って来て、
うんうんと安寧の気分を 胸へ温めたブルックさんだったのだけれども。
彼には温められる胸はなかった…じゃあなくて。

 クリスマスまでには穏やかな海原のうえへ出ていられるよう、
 収拾のつかない厄介だけは抱えて来ないでねと。

今現在 唯一事情が判っている身なだけに、
そうとこっそり願ってしまう、
もーりんと“あなた”だったりするのであった。(笑)


  
HAPPY BIRTHDAY!!  TO CHOPPER!




   〜Fine〜  2013.12.22.


  *ゾロまで“覇王色の覇気”を持ってるかどうかはまだ不明ですが、
   攻撃するぞ・ごらと構えての確たる殺気を放てば、
   威圧に足るだけの波長は放てると思いますので、
   ルフィの覇気に乗っけたということで。

  *別のお部屋のお話ででも書いたことですが、
   天皇誕生日がややこしい日取りなもんだから、
   そこへクリスマスと終業式が微妙な曜日で連なって、
   小学生を子に持つ親御さんは
   大変だろうななんて思っております。
   連休とクリスマスと大掃除と帰省とが複雑に絡まり合う訳ですものね。


ご感想などはこちらへvvめるふぉvv

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